合宿所感 - ケロ
2016/09/20 (Tue) 00:35:05
所感というとエラそうだが、普段めったにない泊まり込み集中練習という感謝な機会をいただいたので、より正確な合宿記は他のメンバーの方に期待するとして、記憶の薄れないうちに自分なりの感想を少し書き記しておきたい。9月の3連休の始まった17日(日)午後から翌18日昼までの丸一日、Hibikiは箱根町芦之湯の創業300年の湯治宿きのくにや旅館に合宿を張った。宿の駐車場に車を止めると、結核療養中の滝廉太郎が箱根八里を作曲し、美空ひばりが少女時代にスケートを楽しんだという、かつて多くの文化人が遊び、行き交う旅人や湯治客で賑わったであろう由緒正しい純和風の建物が、色濃い緑の中に、往時の繁栄を懐かしむかのようにひっそりと、時代に置き忘れられたかのように佇んでいた。恐る恐る玄関に足を踏み入れると、丁度幹事のN氏ほか2、3人の客がフロントにいたので、ああ営業しているなと安心する。と目の前の白っぽい上等なスリッパに履き替えた私に従業員が寄ってきて、Hibikiのお客様のスリッパはこちらではございません、あちらの入口からのものをお使いくださいという。見ると、確かに靴脱ぎのすぐ左手に狭い入口があってそこを入るとHibikiの張り紙をした下駄箱があり、赤いスリッパがあった。なんとなく、従業員用の通用口を彷彿としたが、同時に「天国に至らんとする者は狭き門より入れ」という聖書のフレーズが意味もなく頭に去来する。そうだ自分はただ旅館のおもてなしを楽しみに来たのではない、アンサンブルによる至高の世界を求めてやって来たのだと、何とか自らを納得させる。案内されて赤いカーペットの敷かれた廊下を奥へ進むと、宴会用買い出しをしてくれて先着していた数名の方がホールで静かに昼食を摂っている最中であった。そして、予定通り全員揃って1時すぎから2部屋に分かれて分奏による練習開始。日常の些事から離れて音楽だけに没頭できるひとときは、学生時代に楽器に出会い、仲間とのアンサンブルに無心に熱中した頃の自分に立ち返ったようで、何物にも代え難い格別のものであった。別に所属する某n響でも毎年演奏会前に合宿はあるが、Hibikiの合宿は弦楽器のみのアトホームな雰囲気のもと、互いに顔が見え、風通しならぬ音通しが良い中で互いに聴き合うアンサンブルの原点と自らの技術的な課題に素直に向き合えるものとなった。Hibikiには3人のプロ音楽家がいて、一つひとつ腑に落ちる、示唆に富んだアドバイスをもらえることが非常に大きいし、モチベーションの向上にもつながる。目からウロコというが、その度に自分の目にはどれだけのウロコが付いているんだと思わされる。VnとVaの分奏では、全体でかごめかごめのように輪となり、時にコンミスのyさん(Vaのhさんも一度入った)がかごの中の鳥になって演奏しながらの指導。他のパートを特に意識する箇所の注意、第1関節を動かすヴィブラートのかけ方や弓の使い方等に至るまで、微に入り細に入り普段の練習にはない密度の濃い内容。本当にあっという間に時間が過ぎていく。休憩時間には2VnのTさん差し入れの宝石のようなチョコレートでエナジー補給。18時からの夕食を挟んで19時から21時まで全体合奏。指揮のS先生から、弦セレ冒頭のハ長調の曲としては意表を突いた和音での出だしやピアノでは絶対にハモれない弦ならではの和声のお話(専門的で全ては理解できなかったが…)、ヴィヴァルディの四季「春」では、春らしい音を響かせること、今弾いている音を次の音につなげていくフレーズ感を持つこと、2楽章のVaは犬らしくもっと元気に鳴くこと等の指導があり、「冬」2楽章では一所懸命練習を積んできたであろうVcのNさんの演奏が絶賛され、素直に嬉しそうなNさんを見て思わずこちらも嬉しくなる。(つづく)
  1. (投稿前に、内容をプレビューして確認できます)
  2.